天晴れ大往生  長老犬の旅立ち

 動物愛護仲間のAさんちの長老犬 小梅が 昨日未明に 20年の生涯を終えました。

この年齢にしては、おぼつかないながらも 自力で歩き、食欲も旺盛で、いくつまで頑張るのだろうかと不思議なぐらい元気でしたが、ついに食事を拒否し、立てなくなり、いよいよかと身構えた翌日が明ける前に 家族に見守られながら 無事に天寿を全うしたそうです。

排泄の失敗はあったものの、寝たきりの介護を受けることなく、病苦に悩むこともなく、安らかな晩年でした。

17を過ぎたあたりから、口腔や皮下に故障や不調も経験しましたが、体力があるとの判断で受けた高齢での手術にも耐え、見事復活。 

しぶとく生き抜いた20年でした。

 

 思い返せば 20年前。Aさんが 買いもの先の店の裏側の材木置き場で 何やら気配を感じ 丸太の間をのぞいたところ、そこから小さな顔が小刻みに震えながら Aさんを見ていたそうです。

あるいは 「おばちゃん 助けて」と訴えていたのでしょうか。

生後二ヵ月に満たない幼い子犬を そのまま放置することなどできようはずはありません。

経緯は分りませんが、おそらくお腹も空いており、誰からも守ってもらえない中で、不安と恐怖に震えていたものと思われます。

さぞかし心細かったろうと、Aさんは、その子犬を 丸太の間から引き抜いて そのまま車の助手席に乗せました。

日本犬系の雑種で お世辞にも器量も愛想も良い子ではありませんでしたが、先住犬のワイマラナー ブルーを慕い、2頭は仲睦まじく暮らしました。

歳月は過ぎゆき、初代ブルー、二代目ブルー、そして、まさかの後輩犬祥芳までも見送り、A家の悲喜こもごもを共にしてきました。

猫を追っかけたり、喧嘩を売ったりと、猛々しい性質ではありましたが、途中、あの牧場の保護犬 大ちゃんを引き取った折には、同じ保護犬の情を感じたのか、優しく寄り添っていたそうです。

大ちゃんをも見送り、たくさんの別れを経験してきた小梅婆さん。

 晩年は 保護犬2頭(ペル、ゴン)をも すんなりと受け入れて 歳月を経るごとに丸くなってきた小梅婆さんでした。

我が家のテコ婆さんとは ほぼ同年でしたが、テコは2年先にこの世を去りました。

A家で 後期高齢犬となってから、常にきれいに掃除の行き届いているA家の玄関から廊下には、彼女が失敗してもいいようにと、ペットシーツが敷かれ、家族も 彼女の老いを自然なものと好意的に受け入れているのが解りました。

体重20Kg以上の大柄の身体ながら、20年という長命を生き抜くことができました。

 材木置き場の片隅で 心細くてふるえていた子は、Aさんという女神と出会い、このような幸福な月日を、最期の最後まで安心して送ることができたことは稀有の幸運に恵まれていたのでしょう。

 

 私の店に 立ち寄った折、「子犬がおった。連れて帰った。」と淡々と告げるAさんの視線の先に目をやると、助手席の足元にふるえている小さな犬が居たのを 鮮明に覚えています。

捨て犬だろうね。このままだと 車にはねられるか、処分だろうな。

せっかく生まれてきたのに 文字通り「犬死に」という短くも哀しい最期を遂げる運命から救ってくれたAさんの視界に入ってくれて ありがとう、と言いたい気持ちでした。

私の憐憫の目を感じたのか、幼い犬が卑屈に身を縮める仕草が いたわしくて 愛おしくて この子の一生をサポートしたいとも思ったものです。

 荼毘に付した遺骨は 近いうち 一時期を家族として共に過ごした大ちゃんの眠る牧場の桜の根元に納めるそうです。

A家の20年を黙々と見守ってきたその肉体が消えても これからも 幸多かれと見守り続けることでしょう。

小梅ちゃんの遺骸を前にしても、思わずこみあげる涙は無く、「天寿全う おめでとう。あっぱれ小梅ちゃん」と 拍手喝采で送りたい私なのでした。

小梅ちゃんも天晴れでしたが、保護から最期の看取りまでを守りきり、全うしたAさんとご家族も立派です。

哀しいご報告というより、むしろ おめでたい話、夏ですが ほっこりと温まる話としてご紹介しました。

 

|店主のつぶやき|17:22| - | 2018.08.22 Wednesday |