薔薇のメルヒェン

今年もお誘いいただいていた薔薇の見ごろとなり、朝になって にわかに一っ走りしてみることになりました。

 

当店サイトで 肖像画の「いちりんのはな」さんとしてご紹介しているSさん宅は、鳥取東部の海辺に在ります。

昨日伺った ビンチェーロの近隣集落のお庭も可愛らしくて素適でしたが、こちらも入れ込みようが本格的ですよ。

 

この地では知らぬ人の居ない薔薇愛好家であるSさんは 薔薇の開花に向けての準備に一年をかけます。

ご夫妻のライフワークとして、さまざまな種類の名花を 庭のあちこちに咲かせておられます。

 

初めて聞く名前の薔薇が多く、色や姿の美しさは勿論のこと、その香りも 甘さや強さなど、個性もいろいろあります。

 

名前を聞いても 帰るまでには忘れてしまう私。

これは 確か百枚の花弁があるという種類でした。

牡丹にも似た豊かな花びらです。

 

花びらの数が多すぎるということは、花自体の重さもあって、下向きに垂れてしまうとのこと。

せっかくの花が・・・・。

実るほど 頭を垂れる稲穂かな、というのがありますが、この花もまた そうなのですね。

 

犬を飼った経験のないS家ですが、庭のあちこちに 可愛らしい犬のオブジェが点在していて、これはこれで見ていて 目を和ませてもらいます。

さりげなく この庭に住む妖精のように見えてきます。

 

お得意のフェルト犬。

これは 先般 山口から遊びに来て 一泊のお宿を提供した空我君だそうで、彼の毛を貰いうけ、それを丁寧に洗濯で清めたもので作るそうです。

 

リビングのテーブルにかけて、庭を眺めると、そこには ヒヨドリのためのヤマボウシやモチノキなどが植えられています。

そして、野鳥が水を飲みに来たりできるように、ちゃんと容器が据え付けてある優しさにも癒されます。

愛鳥家のSさんらしい配慮です。

今日の陽光が気持ちいいです。

 

野犬ビンチェロを偲んで Sさんが注文でつくってもらった石像の足元にも フェルト犬が居ます。

 

これは ビンチェロの姿を刺繍したものです。

Sさんは とても芸術的感性が豊かで、想いの深いビンチェロを、まさしく全身全霊で描いたそうです。

一針入魂の傑作ですね。

保護して 初めての愛犬として迎える夢は叶いませんでしたが、彼は その命を終えてから S家にやってきて、今生では果たせなかった人との暮らしを楽しんでいるのかも知れません。

ビンチェロを野犬のまま死なせた無念を 啓発に換えて 不幸な犬、不遇の犬が居なくなる鳥取県、日本を目指したいという希望の下に潔く改めた屋号。それが「ビンチェーロ」なのです。

私も 幻の犬ビンチェロに触れることはありませんでしたが、気高い姿は終生 脳裏に刻まれています。

ビンチェロという犬は、この店の原点ともいえる存在で 尊い象徴なのです。

私に店名まで変えさせるほどの影響を与えた犬、大切なことを教え導いてくれた犬。

それが ビンチェロです。

この刺繍額の前で 久々に会えたビンチェロが愛し過ぎて 投げキッスをせずに居られませんでした。

 

先日 山口から遊びに来た空我君の肖像画は、まだ途中と言いながらも なかなかのものです。

ふわふわした毛の質感も、息遣いも 目の前で見ているようです。

鉛筆による線描画で、淡い水彩を施した作品で、仕上がりが楽しみです。

今にも顔をぬ〜っと突き出してくるようです。

Sさんは 刺繍も絵も全て独学だそうですが、命を吹き込むということにかけても天才的だと思います。

 

 

テーブルにあしらった身近な植物に 可愛い薔薇が一輪だけ。

でも、なんだか おぼろげな輪郭と風合いですね。

 

実は これ、薔薇庭園のSさんが 訪問者へのお土産として私にくれたフェルトの薔薇ブローチなのです。

一針入魂の薔薇は 言うまでもなくSさんのお手製です。

フェルトをチクチクと刺して形を作り、いろいろな色の薔薇を作ったそうです。

本当に器用というか、才能あるというか、手芸の域を出て 工芸や芸術になってしまう不思議なアーティスト、クリエイターでもあるSさんです。

 

|店主のつぶやき|22:07| - | 2019.05.21 Tuesday |