TOWAちゃんの来訪

 誰かを待つ間、一瞬 どことなく沈鬱な表情を見せたなっちゃん。

今日は 特別な訪問客を迎えるために、待ち受けているところです。

 

やがて 一台の乗用車が到着しました。

バックドアを開けると そこには TOWAちゃんが後部座席全体をベッドに仕立てた上に居ました。

 

幾重にも敷かれた毛布は ふんわりとクッションの利いたベッドになっています。

これまでは 家族犬の紬ちゃんと 大型乗用車に並んだクレイト(バリケン)に入っているのが常でしたが、にわかに老衰が進み、

不調の身体に優しい移動方法ということで あえて ベッド仕様に変更です。

 

あれあれ、歩行もままならないのかな? 

この大きな身体を抱こうとする直前、手を貸そうとする私に「もう軽ぅなっとるけえ。」と苦笑いのお母ちゃん。

いとも軽々と抱かれた姿に、体重が減り、老いの進んだ現実を実感しました。

 

ドッグランに入る最初のゲートを通ると、もう匂いを嗅ぎだしました。

地面に下ろしたら、意外にも 慣れた場所と知ってか 脚の運びは滞りません。

 

第二のゲートを出ると そこは 若い頃から つい先日まで 遊びに来ていたおなじみの場所です。

 

入念に匂いを嗅いで、往時を懐かしむかのようです。

 

ためらうことなく すぐに排尿。

 

風を感じ、楽しい日々を感じ、元気だった時代を想い出す表情は、幸せな境遇に満ち足りた顔をしています。

 

 

昔なじみのなっちゃん母ちゃんが 愛おしそうに抱き留めます。

 

そうそう。いつも 平和をそのまま表したような顔で 大好きな人に甘える仕草です。

 

なっちゃん母ちゃん 感無量!

ずっと この15年ばかりを 友達として接してきた彼女も こうして TOWAちゃんを ひしと抱きしめるのは久しぶり。

TOWAちゃん、この世の極楽という顔で 全身を委ねたまま、身体をくねらせて甘えるひとときを 温かい陽光が包みます。

 

 

彼女の水の飲み方は、昔から これ。

蛇口からの直飲みです。

ほどよいところで 蛇口を止めます。

 

春には程遠いのに、優しい日光に味方してもらい、ドッグランでのふれあいのひとときに満足した後、店内でお茶をすることにしました。

これまで 元気すぎるTOWAちゃんは、無作法があってはならじと、お母ちゃんの遠慮とお気兼ねから、店内には入れることなく、ドッグランから車に直行だったけれど、今日は違います。

彼女がよく知る顔ぶれがお茶を手に談笑する場に、こうして同席させました。

ほ〜ら、ブログで紹介のわんこ帽も かぶせてみましょうよ。

サイズが違うため、かぶることはできませんが、この愛らしさを目で楽しもうと、注がれた視線を いつもの笑顔で受け止めてくれました。

 

 これまでも、寝たきりの子を同伴でご来店の方もあり、こういう子が来ると 毛布で対応しますが、あの元気印のTOWAちゃんが、柔らかい毛布の上で休む光景を見るとは想いませんでした。

目に力こそありませんが、安らかで 嬉し気です。

 

今日は 病院帰りに 脚を伸ばしての訪問です。

常に笑顔で 場を明るくしてくれるお母ちゃんのそばで、仲間との談笑を 毛布の上に伏せて見守ります。

強引にお菓子をねだることもなく、ただ その優しい時間を味わっているようです。

 

談笑のひとときを終えて さあ、そろそろ帰るよ。

老犬に優しい仕様の服には、前半身と後ろ半身に 体重を支える持ち手がついています。

それを引っ張り上げるように 前進を手伝います。

みんなが 「TOWAちゃん がんばって。」と声援を送ります。

TOWAちゃん、それに応えて 危なげな足取りですが、車の方に歩みを進めます。

 

元気なころは、この車より車高のある車のバックドアを開けたら、一瞬で飛び乗ったものです。

しかし、今日は このように優しく抱かれて よいしょと乗せます。

 

 

今度、いつ来れるかな。

お天気がよく、体調も悪くなければ、是非 また来て欲しいと願いながら 車上の友を見送ります。

 TOWAちゃん 3月で15才です。

これまで 年齢の割に元気だと 皆さんに感心されており、この調子では二十歳も目指せるようだと 健康面での不安が話題になることがありませんでした。

しかし 年明けて 急に食欲がなくなり、嘔吐、多飲多尿の症状が出始めたかと思ったら あれよあれよというまに老化が加速してしまったようです。

診察と検査の結果、なんと、重度の腎不全ということが判り、最終章に入ったことを認めざるを得なくなったご家族のご心情は まだ心の準備ができていないだけに とてもお辛いものがあります。

これまで 深刻な病気もせず、元気いっぱいだった14年間でした。

しかし、ここに来て まさかの腎不全という現実は 平素関わっている私にも大いにショックです。

老いは どの子にも避けることのできない身体の宿命です。

それを承知で迎え、長命を目指し、最善を尽くしての管理に努めて来られた飼い主さんにとって、急に坂を駆け下るような、予兆のない老衰現象を自然体で受け入れることは とても酷であり、哀しいものです。

子犬時代から関わってきた私にとっても 動揺は禁じえません。

 もう幾日も食べていないTOWAちゃんは 補液(脱水予防の点滴)を毎日受けて 生命を保っています。

今日 小さなときめき、ワクワク感をと思い、指先に ほんの少量だけ乗せたおやつを それでも 口にしてくれる瞬間を目の当たりにして小躍りしてしまいました。

嘔吐が日常的な症状となっているTOWAちゃんにとって 食の可能性は もう皆無なのかと 残念でなりませんが、あとは、ささやかな喜びを絶やすことなく 力まずに向き合う日々を最良の薬として 笑顔で支えていくことが肝要かと思う次第です。

 15の誕生日が迎えられたら嬉しいけれど、数字にこだわるのはやめにして、一日一日の満足感を大切に、安らかな晩年を守ってもらいたいと願うばかりです。

 今度いつ会える? そうつぶやきながら 家路に帰っていく車を 押し寄せる深い感慨を振り払うように 手を振る私たちでした。

 

今日は 昨日のにぎわいとは対照的に とても静かな一日でした。

午後からは 鳥取市の犬収容所から 一頭の中型犬を遊ばせに来られ、解放感を味わう犬と、相手をして遊ぶ職員さんの姿が 窓の外に展開するのを そっと見守っている店主でした。

どの子も幸せであれ。

|店主のつぶやき|17:59| - | 2020.01.14 Tuesday |