デビュー前

 つい数日前、県内某施設から、一般の里親希望者宅に引き取られたばかりのアスティン君が、ドッグトレイナー、谷畑さんの提案で ビンチェーロドッグランに連れて来られました。

アスティン君は ただいまトライアル中。

里親さんは 念願の保護犬を迎えるという夢を実現されたのですが、アスティン君は、かなり難易度の高いワンちゃんです。

というのも、彼は おそらく、多頭飼い、虐待という不幸な経験をしているようで、人への恐怖心や警戒心から、心を閉ざした状態が続いているからです。

犬に不慣れな里親さんは、しかし、あえて、気になるアスティン君を家族として迎える決意をされたのでした。

ゼロからのスタートではなく、マイナスからのスタートですが、ラインでのやりとりで相談に応じている谷畑さん(遠隔地なので)によれば、まだスタートラインにも立っていない状態なのだそうです。

犬と人との息が合うどころか、拒否と同情、抵抗と同調など、二者のリズムは不協和音のまま。

相談を受けたからには 本気で向き合う谷畑さんとしては、もう 距離云々と言っていられず、早期に面談での指導を急ぎたいとの経緯があり、まずはビンチェーロドッグランでの対面となった次第です。

 開店前の時間帯を利用し、ドッグランでの様子を見るのと、飼い主さんの接し方、他犬に対する態度など、いくつかチェックしながら、家庭犬としての馴致に向けた指導を行うのが目的です。

誰も居ない時間帯を選んでの実地講習という設定です。

 

極度の怖がりのアスティン君の尻尾は ご覧の通り 垂れっぱなし。

顔にも緊張の色が読み取れます。

未知の場に立ち、何がどうなるのか不安でいっぱい。

警戒心に満ちた視線を四方に向けています。

 

 

ありがたいことに、この日のトレーニング協力者として、ビンチェーロの常連さんであるヴェールちゃんをお願いしていましたが、早速の出動で、お役に立ってくれます。

 

はじめまして。

大丈夫よ。

いわゆる「トモダチ作戦」というやつ。

 

アスティン君は、ヴェールちゃんの匂いを嗅ぎつつ 相手が自分にとって安全な存在だと悟ったようです。

 

投入した光希も OKでした。

 

リードを放されたアスティン君、飼い主さんと一緒のヴェールちゃんのことが気になる様子。

 

ついに、初対面の相手の匂いを嗅ぎ 敵意がないことを確認。

トモダチ作戦 成功か。

 

光希とヴェールちゃんも挨拶をします。

 

お互いの正体が徐々に分かってきたか。

身元調査に余念がありませんが、これも筋書き通り。

 

敵・・・・ではなく仲間。

嫌い・・・・・じゃなく 好き。

拒否・・・・じゃなく、受け入れ。

こうした犬同士のコミュニケーションこそが、いや、犬同士でないとできない心のホグシが ヴェールちゃんに任じられたお役目。

 

やがて、楽し気に 人を交えての交流開始。

まだ不安げに 距離を置くアスティン君。

 

2頭の仲間が人とふれあう様に関心はあるようで、じっと見ているアスティン君。

 

Come !♪

合図で従う仲間は 決して怖がってもおらず、不快でもなさそう、と 脇で見学しています。(本犬は写っていません)

 

さて、アスティン君は 里親さんと歩いて移動するのが まだ受け入れられないようです。

散歩を楽しむなんて 現時点では遠い夢。

 里親さんが誘っても どうしても動こうとしないアスティン君を見かねた谷畑さんが やむなくリードを持って 誘導の仕方を伝えます。

 

怖がって固まるアスティン君。

見守る仲間。

 

まだまだ 隙あらば逃げようとするアスティン君の安全を確保するために、首輪の果たす役割は重要です。

慣れて軌道に乗るまでは 二重三重の安全策が必要です。

 

谷畑さんが ジリジリと一方的に引っ張らなくても ほんの一瞬の刺激で促しただけで アスティン君、立ち上がり、前進しましたよ。

この要領を見ておられた里親さん、実践してくれたらいいな。

 

以前 譲渡された茶トラのトラコ君が訪問してくれました。

元気そうで安心しました。

 

猫は 外に出入りさせないようにとのお願いを守り、せめてもと ハーネスとリードを着けての訪問です。

が、過剰に刺激して 抜けてはいけないと、今回は玄関先でのご挨拶に留まってもらいました。

大切にしていただき ありがとうございます。

 

ドッグラン講習が終わり、店内に入ったアスティン君。

初めてのドッグラン。

初めての店内。

里親さんは 「やっとリラックスしてくれました。」と笑顔でホッとされましたが、谷畑さんによれば、これはリラックスではないとのこと。

顔は笑っていても 犬の状態を見抜く谷畑さんの厳しい助言に 里親さんも身の引き締まる想いだったことでしょう。

さんざん神経を遣いくたびれただけのことだそうで、まだまだ「隙あらば」オーラは消えていないとのこと。

飼い主側の緊張や不安が伝わらないように接することは大切ですが、まだ この段階でのアスティン君に油断は禁物。

彼を引き取ったからには 確実に守らねばならない使命を片時も忘れることなく、脱走、逃亡などを防止することが第一です。

アスティン君の これまでの不遇な経緯を想像するだけで涙が出ると声を詰まらせる谷畑さんですが、不幸な犬を無くしたいとの強い想いから、縁あって関わった子と飼い主さんには全力での支援を惜しみません。

動物愛護福祉啓発団体アニマルリンク鳥取精神そのままの人です。

 ビンチェーロドッグランでの初体験がきっかけとなり、健全な社会化と、犬としての運動欲求を満たすためにも、機会を作って

ここを利用するようにお勧めすると、里親さんも 手ごたえを感じたらしく、前向きに「是非!」と応えて下さいました。

 この後、谷畑さんは 里親さん宅に赴き、周辺環境の点検、自宅での指導で「アスティン親子」の末永い幸福な歳月を構築するための指導に当たったそうです。

 

今回、トモダチ作戦の大役を果たしたヴェールちゃんには 感謝です。

威圧や攻撃性皆無、ほんわかオーラの持ち主ということで お声をかけさせてもらいましたが、大成功でした。

彼女の存在に、アスティン君は 家庭犬としてのスタートを切れた気がします。

心の扉を開いてくれたヴェールちゃんに 心からの「ありがとう」を伝えます。

初めての場所で 出会えた相手が、敵ではなく 仲間であり、友達として素直に 自然に受け入れられたことは大きな成果です。

アスティン君の幸福な未来に続く固い扉を開いてくれたヴェールちゃんに 里親さんも喜んでおられました。

お願いしてよかった。

予想以上の任務を果たしてくれたヴェールちゃん、ありがとう。

お疲れ様。

アスティン君の親友になってくれそうです。

トライアル中のアスティン君が めでたく譲渡完了の祝杯を揚げる日まで、いや、心の武装を解いて、笑って暮らせる日を迎えるまで、ヴェールちゃん始め、いろいろな子たちの力を借りることもあるかと思います。

犬の性質によりますが、彼の心がほぐれていく過程を共に歩んでくれる友達犬の支援を よろしくお願いしますね。

|店主のつぶやき|18:13| - | 2020.03.08 Sunday |